カイユリコに学ぶ「私はおっさんに話しかけられたくありません」フラグの設計

Last updated 3 months ago

おそるべきセクシストであると同時にアンチマストドンの急先鋒であるカイユリコ [1] ではあるが、学ぶべきところもないとはいえない。まずは、Facebook疲れを性と世代間対立に帰している、この発言を見てみよう。

若い世代にとってみると、先行世代がわんさかいるツールって使いづらいんでしょうね。Facebookでも、上司から友達申請が来たらどうしようという問題があります。無視もできないけど、おじさんのウンチクを語られても困る、みたいな結果「ミュート」が流行る。

また、これとは別のインターネットの騒動として、アートジジ騒動 [2] を取り上げる。ある雑誌の記事を要約したインタビューで、「熱心に鑑賞している女性がいたら、さりげなく「この画家は長い不遇時代があったんですよ」などと、ガイドのように次々と知識を披露する。そんな「アートジジ」になりきれば、自然と会話が生まれます。」などのセクシスト的な発言があり、主に悪い意味で話題となった。例えば「控えめに言って好きな作家の絵を見てる時に 1 番されたくないこと全部されてるので消えて欲しい」といった反発 [3] が表明された。

さらに別のインターネットの騒動を挙げると、ゴルスタという中学生・高校生を対象にしたスマートフォンアプリで、運営者によるさまざまな乱暴な行動が問題になった [4] ことがあった。例えば、ツイッターなどでゴルスタの運営を批判したユーザーを特定し、ゴルスタのアカウントを停止したうえで、アカウントの再開と引き換えに運営を賛美するツイートを強要するという傲慢な運営が見られた。このような乱暴な運営にもかかわらず、ゴルスタがユーザーを集めた理由として、東洋経済オンラインの記事 [5] は「援交を持ちかけるキモいオヤジがいないから、すごい楽」というユーザーの声を挙げている。

これらの例を見るに、私たちは人間を性と年齢層によって区分して、自分たちにとって不快な者たちを隔離したいという欲求があることが分かる。ならば、これを奸計によって糊塗するのではなく、素直に実装してみてはどうだろうか。

私はマストドンに「私はおっさんです」フラグと「私はおっさんに話しかけられたくありません」フラグを実装することを提案する。さらに「私はイケメンです」「私は年収1000万円以上です」も加えると批評性があるかもしれない。

より詳細に設計を詰めてみよう。マストドンのユーザー登録画面に以下のチェックボックスを置く。デフォルトは順にOn, Off, Offとする。

  • 私はおっさんに話しかけられたくありません

  • 私はおっさんのトゥートを見たくありません

  • 私はおっさんです

「話しかけられたくありません」はDM(ダイレクトメッセージ)、リプライ、通知を非表示にする効果を持つ。

この機能が導入される以前に登録したユーザーと、この機能を実装していないインスタンスのユーザーは、これらのフラグがすべてOffであるものとする。これは、過去との互換性、すなわち、この機能が導入される以前と同じ動作を引き続き提供するためである。

「私はおっさんに話しかけられたくありません」は特定のユーザーから発言の機会を奪うものであり、その機能は差別的かつ危険である。発言の機会を奪われる側が自らの意志で「私はおっさんです」をOnにすることで、かろうじて人道的な問題が回避されている。それでもなお、「私はおっさんです」をOnにする者は、差別的な体制を自ら擁護するものだとして糾弾されるかもしれない。

ところで、より自明なソリューションがすでに存在する。それは女性専用のインスタンスを開設することである。ユーリカ(julika.jp)の運営者はインタビュー [6] で「現在ユーザー数が上位のインスタンスで普通の女性がすんなり入っていけそうなところは皆無に近い。そこに存在価値はある。」と話している。

参考文献

[1] 速水健朗, カイユリコ, 「おじさんウケするサービスは流行らない」インスタグラムのプロが断言, https://www.houdoukyoku.jp/posts/11027

[2] 岸田一郎, NEWSポストセブン「ちょいワルジジ」になるには美術館へ行き、牛肉の部位知れ, https://www.news-postseven.com/archives/20170610_561363.html

[3] 咲羅, 控えめに言って好きな作家の絵を見てる時に1番されたくないこと全部されてるので消えて欲しい。, https://twitter.com/skr_0221/status/873863268594458624

[4] 墓場人夜, ツイッターの「運動」はどのように開始され、どのように忘れ去られるか, https://hakabahitoyo.wordpress.com/2016/12/09/golsta/

[5] 河崎環, 中高生限定「ゴルスタ」騒動が示した本当の闇, http://toyokeizai.net/articles/-/135357

[6] 松尾公也, Exciteの女性向けインスタンス「julika」(ユーリカ)始まる 10代からママまでカバーする「キラキラ女子」マストドンを作った理由, http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1706/27/news079.html

[7] 墓場人夜, 分散SNSの政治とビーフ, https://hakaba-hitoyo.github.io/distsn/beef-2