分散SNSの歴史と現状
この節では、予備知識として、分散SNSの概要と歴史的経緯を説明する。
分散SNSの概要
まず、SNSという用語について。これはsocial networking serviceの略である。おおまかに言って、他のユーザーをフォローする機能があればSNSと呼んでよさそうである。GitHubですらSNSと呼ばれることがある。
SNSのうち以下の機能を持つものはミニブログと呼べそうである。
観察対象 (フォロー)
観察者 (フォロワー)
タイムライン (タイムライン)
投稿 (ツイート)
賛美 (いいね)
拡散 (RT)
ここで、括弧の前は本書での用語、括弧内はツイッターでの用語である。
分散型ミニブログは、複数の運営者が自主的にサーバーを運用して、それらのサーバーが情報交換を行うことにより、ミニブログを構成するものである。分散型ミニブログではサーバーをインスタンスと呼ぶ習慣がある。インスタンスはリモートフォローにより結びついている。リモートフォローとは、他のインスタンスに所属するユーザーをフォローすることである。
複数のインスタンスが情報交換することで一体のSNSを構成している状態を連合と呼ぶ。プロトコルが同一であれば連合を形成することができる。プロトコルが同一であっても、特定のインスタンスとの接続を拒否することで、連合を分断することが可能である。分散SNSのプロトコルには、例えば以下のものがある。
Ostatus [1] は、かつてデファクトスタンダードだったが、ActivityPubへの移行が進んでいる。
ActivityPubはOStatusの後継プロトコル。マストドン1.6.0以降で使用できる。
Yayaka19 [8, 9] は独自のプロトコルを使用する。
HVDSGM [10] は独自のプロトコルを使用する。horizontally and vertically distributed social graph and messagingの略。単純な設計と省力化された実装が特徴。
Yayaka ProtocolはYayaka19の後継プロトコル。HVDSGMから水平分業のアイディアを取り入れている。
OStatusプロトコルの実装には、マストドン [4, 5, 6]、GNU social [2, 3] などがある。マストドンは2017年4月に日本で大流行した。GNU socialは、別の名前の前身を含めると2007年ごろから存在する。
GNU socialのインスタンスには、本書の説明に必要なものだけを紹介すると、FreezePeach (freezepeach.xyz)、LGBTPZN social (social.pzn.lgbt) などがある。マストドンのインスタンスのうち、日本語圏かつ大規模なものは、mstdn.jp、Pawoo (pawoo.net)、ニコフレ (friends.nico) などが知られている。
分散SNSの歴史
分散SNSの歴史の一部を略年表で示す。より詳細な歴史は横田 [7] を参照。
2006年 Twitter開設。
2007年 エヴァン・プロドロモウがidenti.caを開設。プロトコルはOpenMicroBlogging、実装はLaconicaと呼ばれていた。
2008年 Twitterの日本語UIが使用可能になる。
2009年 LaconicaがStatusNetに改称される。
2010年 StatusNetがOStatusプロトコルのサポートを開始。
2012年 W3CがOStatus Community Group [1] を設置。座長はエヴァン・プロドロモウ。
2013年 StatusNetとFree socialがGNU socialに統合される。
2016年11月 川奈清 [2] がfreezepeach.xyzを使い始める。freezepeach.xyzに日本人街が形成される。
2017年1月 墓場人夜 [3] がfreezepeach.xyzを使い始める。LGTBPZN支持者を中心に移住者が現れる。
2017年1月 Yayaka19 [8, 9](当時の名称はShare)開設。
2017年4月 social.pzn.lgbt開設。
2017年4月 遠藤諭の記事 [4] により日本でマストドンが流行する。
2017年5月 Yayaka19 が分散化される。
2017年8月 HVDSGM [10] 開設。
2017年8月 めんていショック [11] によりPawooのユーザーが急増。ブーム再来の活況を見せる。
2017年9月 中国ショック [12] によりPawooのユーザーが急増。