登録ユーザー数をインスタンスの評価に使うのはもうやめよう
マストドンのインスタンス一覧はユーザー数順のものが多く、デファクトスタンダードであるk52.orgも例外ではない。しかし、インスタンスの評価に登録ユーザー数を使うのは悪い考えである。かわりに分散SNSフォーラムの流速順リストを使うべきだ。
マストドンのインスタンスの一覧
マストドンには多数のインスタンスがあるので、インスタンスの一覧をうたうウェブサイトも多数ある。ブログ、Wiki、静的ウェブサイトで作成されているものを除いても、以下のような多数のインスタンス一覧がある。なお、ウェブサイトのタイトルを書くとどれも「マストドンインスタンス一覧」のような名前になってしまうため、ドメイン名または運営母体を記載する。
instances.social
tacostea.net
k52.org
mastodon-instance.com
マストドン検索ポータル
分散SNSフォーラム
マストポータル
では、インスタンス一覧の特徴を順に見ていこう。
instances.social (https://instances.social/list)
これは海外のサイトなので、日本語圏のインスタンスだけを選ぶことができない。インスタンスのリストのほかにインスタンス推薦ウィザードがあるのが特徴である。リストのシンプルモードはランダム順である。アドバンストモードは以下のような多数のソート順を選択できる。
状態 (稼動/停止)
ドメイン名 (アルファベット順)
登録ユーザー数
トゥート数
接続インスタンス数
ユーザー登録の受付可否
バージョン
稼働率
HTTPS
Obs (Observatory by Mozilla)
tacostea.net (http://instances.tacostea.net/list)
作者は日本語話者であるが、インスタンス一覧は言語による区別を行っていない。このインスタンス一覧は「新バージョン追従バトルを観測する」ことを目的に開発されたものであり、一般のユーザーが使うには不向きである。以下のような多様なソート順を選択できる。
ドメイン名 (アルファベット順)
状態 (稼動/停止)
バージョン
バージョンをアップデートした日
登録ユーザー数
トゥート数
接続インスタンス数
ユーザー登録の受付可否
IPv4, IPv6接続可否
ディレイタイム
k52.org (http://k52.org/mastodon/)
おそらく最も有名なインスタンス一覧である。並び順は登録ユーザー数または新着順で、デフォルトは登録ユーザー数である。
インスタンスの名称または説明文に日本語が含まれていることが条件なので、日本語圏のインスタンスのみを探すことができる。ただし、この性質のため、mastodon.cloudは日本語のトゥートが多いにもかかわらずk52.orgに収録されていない。
また、登録ユーザー数が20以上のインスタンスのみが表示されるため、新興インスタンスにとっては参入が難しいリストである。
mastodon-instance.com (リンク切れ)
言語は「日本のみ」と「全世界」から選択できる。並び順は以下のものがある。デフォルトは新着順である。
新着
登録ユーザー数
トゥート数
接続インスタンス数
マストドン検索ポータル (http://mastodonsearch.jp/instanceall/)
並び順は登録ユーザー数である。
分散SNSフォーラム (http://distsn.org/instance-speed.html)
並び順は流速と新着である。流速とは、ローカルタイムラインの1時間あたりのトゥート数である。新着順は、現存する最古のトゥートの日時で判断している。分散SNSフォーラムのインスタンス一覧は日本語圏のインスタンスのみを収録している。ただし、mastodon.cloud は日本語のトゥートが多いためリストに含めている。
マストポータル (https://mastportal.info/)
並び順は流速と新着である。トップページでは、流速順の上位5位に続いて新着順が表示される。マストポータルの流速順は分散SNSフォーラムのデータをAPI経由で使用している。そのため、分散SNSフォーラムの流速順のリストと内容は同じである。
登録ユーザー数をインスタンスの評価に使うのをやめろ
instance.socialは海外、tacostea.netは技術者用、mastodon-instance.comと分散SNSフォーラムはまだあまり知られていないので、k52.orgが日本ではデファクトスタンダードになっている。例えば、2017年7月21日の日経スタイルの記事 [1] でもk52.orgが紹介されている。このk52.orgのデフォルトの並び順は登録ユーザー数である。
しかしながら、登録ユーザー数をインスタンスの評価に使うのは悪い考えである。2017年4月のマストドンブームに乗ってユーザーを集めたものの、すぐに荒廃してしまったインスタンスが複数あることが知られている。また、ローカルタイムラインを見るためにユーザー登録して、トゥートは他のインスタンスで行うようになったユーザーも多い。
新着順は、新興インスタンスに光が当たるという利点があり、悪くないアイディアである。ただし、ユーザーの立場からすると、新興インスタンスはユーザーが少なすぎ、ローカルタイムラインでの交流は寂しくなりがちである。
トゥート数は、登録ユーザー数よりはインスタンスの実力に一致していると感じられる。しかしながら、これはインスタンスの開設から現在までの累積であるため、過去には勢いがあったものの、現在は荒廃しているインスタンスが上位に来ることがある。特に、マストドンにおいては、2017年4月のブームの時期と、それ以降の時期とで状況が大きく異なるため、当時を含む累積値を指標として用いると現在の状況が反映されにくいという事情がある。
流速は、過去からの累積を用いず、現時点でのインスタンスの活発さを反映した指標である。そのため、過去の人気にとらわれず、現時点での実力を見ることができるという利点がある。
とはいえ、流速順にもいくつかの欠点がある。第1に、スパムによる投稿を算入してしまうことが挙げられる。ただし、あまりにもトゥートが多すぎるスパムは、ユーザーやインスタンス管理者にブロックされやすいため、スパマーはぎりぎりの投稿頻度に調整しようとする。そのため、スパム業者が流速に与える影響には一定の限界がある。
第2に、流速はトゥートの数を数えるのみであり、トゥートの質を考慮しないことである。むしろ、一般的には、質と量は反比例する傾向がある。流速は遅いものの、ほどよく限定されたテーマについてよく考えられたトゥートが見られるインスタンスには、かくどん (kakudon.com) やユリトピア (mastodon.yuritopia.net) などが挙げられる。
いずれにせよ、マストドンのインスタンスの評価に登録ユーザー数を使うことは最悪である。かわりにローカルタイムラインの流速を採用すれば、より直感に合致した評価基準にもとづいて、インスタンスを選択することができるだろう。分散SNSフォーラムのリストを使うべきだ。
参考文献
[1] 日経電子版, 新SNSマストドン、居心地よく楽しむまでの4ステップ, https://style.nikkei.com/article/DGXMZO18936960Y7A710C1000000
[2] 墓場人夜, 登録ユーザー数をインスタンスの評価に使うのはもうやめよう, https://hakabahitoyo.wordpress.com/2017/07/21/number-of-users-is-shit/
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